肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)
9/24〜9/30は結核・呼吸器感染症予防週間及び非結核性抗酸菌症啓発週間です。結核と症状・画像がよく似ているのに、実は人にはうつらない「もう一つの抗酸菌症」。患者数は年々増えており、日本は肺MAC症の罹患率が世界的にも高い国のひとつです。
💡 注目ポイント
- 起因菌の8〜9割はMAC(Mycobacterium avium complex)で、次いでM. abscessus、M. kansasiiなどがみられます。土壌や浴室・シャワーヘッドなど環境中の水回りに常在する菌で、結核と違いヒトからヒトへはうつりません。
- 中高年のやせ型女性に多い、中葉・舌区を中心に気管支拡張と小結節が広がるタイプと、喫煙歴のある男性に多い空洞形成型があり、どちらも症状・画像所見が結核に似るため鑑別が重要です。
- 喀痰培養で同一菌種が2回以上陽性(または気管支洗浄液で1回陽性)などの診断基準があり、菌が検出されても直ちに治療開始とは限らず、症状や画像の進行度をみて治療開始のタイミングを判断します。
- 標準治療はクラリスロマイシン(またはアジスロマイシン)+リファンピシン+エタンブトールの3剤併用療法を1年以上継続。既存治療で効果不十分な難治例には、吸入用のアミカシンリポソーム製剤(アリケイス)が追加の選択肢になります。
🩺 症状・特徴
慢性の咳・喀痰、血痰、微熱、倦怠感、体重減少などが数か月〜数年かけてゆっくり進行します。自覚症状がはっきりせず、健診の胸部X線・CTで偶然見つかることも少なくありません。画像では中葉・舌区を中心とした気管支拡張と小結節影が特徴的で、進行すると空洞を形成することもあります。
💊 対応・治療のポイント
肺MAC症の標準治療は、クラリスロマイシン(またはアジスロマイシン)+リファンピシン+エタンブトールの3剤併用療法で、菌陰性化後も1年以上の長期継続が必要です。空洞病変を伴う重症例では、注射用のアミノグリコシド系薬(ストレプトマイシン、カナマイシン、アミカシンなど)を併用することがあります。複数の薬剤による治療でも効果不十分な難治性肺MAC症には、吸入用のアミカシンリポソーム製剤(アリケイス)が2021年から選択肢に加わりました。M. abscessus症など菌種によっては治療がさらに難しく、専門施設での治療が推奨されます。
⚠️ 服薬指導・現場での注意点
クラリスロマイシンなどマクロライド系薬の単剤使用・自己中断は耐性化を招くため厳禁で、多剤併用・長期継続の必要性を丁寧に説明することが重要です。リファンピシンは尿や汗が赤橙色になることがある(心配ないが事前説明が望ましい)ほか、CYP3A4誘導による薬物相互作用(ワルファリン、経口避妊薬、一部の抗ウイルス薬など)に注意します。エタンブトールでは視力低下・色覚異常などの視神経障害、アミノグリコシド系薬では腎機能障害・聴覚障害のモニタリングが服薬指導・処方監査のポイントです。結核と異なり空気感染はしないため周囲への感染対策は基本的に不要ですが、結核との合併・鑑別の観点から治療歴や検査結果の確認は引き続き大切です。
診断基準や治療ガイドラインは学会により改訂されることがあるため、最新情報は日本呼吸器学会・日本結核病学会(現:日本結核・非結核性抗酸菌症学会)等の公式情報でご確認ください。