乳がん(ピンクリボン月間:検診の大切さと最新の治療)
10月はピンクリボン月間。乳がんは女性のがんの罹患数第1位で、早く見つけるほど治りやすいがんです。検診の受け方と、タイプごとの治療のしくみを整理しました。
💡 注目ポイント
- 国立がん研究センターの統計では、2023年に乳がんと診断された人は約10.3万人(うち女性約10.26万人)で、女性のがんの罹患数第1位です。2024年の死亡数は約1.6万人(女性約1.59万人)で、女性のがん死亡の第4位。5年相対生存率は約9割(2018年診断例・女性で89.7%)と高く、早期発見が治療成績に直結します。
- 国の指針に基づく乳がん検診(対策型検診)は、40歳以上の女性が2年に1回、問診とマンモグラフィを受けるのが基本です。科学的に死亡率を下げる効果が確認されているのはマンモグラフィで、視触診は国の指針では推奨されていません。
- 2022年の国民生活基礎調査での乳がん検診の受診率(40〜69歳女性)は47.4%と、約半数にとどまり、国の目標(60%)には届いていません。症状がなくても、40歳になったら2年に1回は検診を受けることが大切です。
- 乳房全体が白く写る「高濃度乳房(デンスブレスト)」では、マンモグラフィだけでは小さなしこりが見つけにくいことがあります。検診結果の伝え方や追加検査(超音波検査など)の扱いは自治体や施設によって異なるため、気になる場合は検診機関や主治医に相談するよう伝えましょう。
- 治療は手術・放射線療法・薬物療法を組み合わせます。薬物療法は、がんのタイプ(ホルモン受容体の有無、HER2、トリプルネガティブ)に合わせて選ぶのが特徴です。2026年6月には日本乳癌学会の『乳癌診療ガイドライン2026年版』が改訂され、薬物療法のフローチャートが追加されました。
🩺 症状・特徴
初期の乳がんはほとんど症状がなく、検診や自己チェックで見つかることが多いがんです。進行すると、乳房のしこり、乳頭からの血の混じった分泌物、皮膚のえくぼのようなひきつれ、乳房の変形や赤み、わきの下のしこり(リンパ節の腫れ)などがみられます。年齢別では40代後半から増え、60代前半にも多くなる傾向があります。リスク因子には、閉経後の肥満、飲酒、血縁者の乳がん・卵巣がん(遺伝性乳がん卵巣がん症候群:BRCA1/2の変異など)があります。日ごろから自分の乳房の状態に関心を持つ「ブレスト・アウェアネス」も推奨されています。
💊 対応・治療のポイント
手術は、がんの大きさや広がりに応じて、乳房を温存する手術(術後に放射線療法を併用)か乳房全切除かを選び、わきの下のリンパ節はセンチネルリンパ節生検で転移の有無を調べます。薬物療法は、タイプ別に次のように使い分けます。ホルモン受容体陽性:内分泌療法(閉経前はタモキシフェンやLH-RHアゴニスト、閉経後はアロマターゼ阻害薬)を5〜10年続け、再発リスクが高い場合や進行・再発ではCDK4/6阻害薬(アベマシクリブ、パルボシクリブ)を併用。HER2陽性:トラスツズマブ、ペルツズマブなどの抗HER2薬や、抗体薬物複合体(トラスツズマブ エムタンシン、トラスツズマブ デルクステカン)。トリプルネガティブ:化学療法に免疫チェックポイント阻害薬(ペムブロリズマブ)を組み合わせることがあります。BRCA遺伝子変異がある場合は、PARP阻害薬(オラパリブ)も選択肢です。
⚠️ 服薬指導・現場での注意点
薬局では、長期間続く内分泌療法の「飲み続ける大切さ」を支えることが重要です。タモキシフェンは不正出血・子宮内膜がん、血栓症、ほてりに注意が必要で、CYP2D6を強く阻害するパロキセチンやフルオキセチンなどの併用で効果が弱まる可能性があるため、併用薬の確認が欠かせません。アロマターゼ阻害薬は関節痛・骨密度低下(骨粗鬆症)が起こりやすく、骨密度の定期検査やカルシウム・ビタミンDの摂取、運動のアドバイスが役立ちます。CDK4/6阻害薬では、アベマシクリブの下痢(早めの止瀉薬の使用)や、間質性肺疾患、好中球減少、血栓症、CYP3A4を介した相互作用(グレープフルーツなど)に注意します。抗HER2薬や抗体薬物複合体では、間質性肺疾患を疑う咳・息切れ・発熱の訴えを見逃さないことが大切です。あわせて、検診のきっかけを聞かれたら、40歳以上は2年に1回の検診を勧めましょう。
統計は国立がん研究センター「がん情報サービス」の最新値(罹患2023年、死亡2024年)に基づく2026年10月時点の内容です。検診の対象年齢・間隔・内容は自治体によって異なる場合があり、治療も診療ガイドラインの改訂で変わるため、最新情報は厚生労働省・国立がん研究センター・日本乳癌学会などの公式情報でご確認ください。